Lie 代数の括弧積
Lie 代数の元の括弧積で出来た項があるとして、それを展開する方向には [X, Y]=XY-YX の定義に従って機械的にできます。しかし、展開したものを逆向きに括弧積に戻すのは、一般的には相互に打ち消しあう適当な項を付け足してやって考えねばならないので面倒です。
ところが、これを簡単に求める方法があります。各項の文字を ad( ) でくくり、項の次数で割るだけです。ただし右端の文字だけは ad される対象とします。
[X,Y]=XY-YX ⇒ ( ad(X)(Y) - ad(Y)(X) ) / 2 = ([X, Y] - [Y, X])/2 = ([X, Y] + [X, Y]) / 2 = [X, Y]
で元に戻ります。
同様に
[X, [X, Y]] = XXY - XYX - XYX + YXX
⇒
( [X, [X, Y]] - 2 [X, [Y, X]] + [Y, [X, X]] ) / 3= ( [X, [X, Y]] +2 [X, [X, Y]] + 0 ) / 3 = [X, [X, Y]]
で元に戻ります。
さらに
[X, [Y, [X, Y]]] = 2XYXY - XYYX - XXYY - 2YXYX + YYXX +XYYX
= 2XYXY - 2YXYX -X^2Y^2 + Y^2X^2
⇒2 [X, [Y, [X, Y]]] - 2 [Y, [X, [Y, X]]]
ここで [Y, [X, [Y, X]]] を展開してやると、[Y, [X, [Y, X]]] = -[X, [Y, [X, Y]]] が分かるので、右辺は 4 [X, [Y, [X, Y]]] となり 4 で割れば元に戻ります。
いま展開して元に戻しましたが、Jacobi の恒等式を用いて ad([X, Y])=[ad(X), ad(Y)] の ad と括弧の準同型を用いると展開しなくても等式変形できます。
一般の場合は準同型性を使って、数学的帰納法で示せます。
そしてこれを用いると、Baker-Campbell-Hausdorff の公式の具体的な表式が log と exp の級数展開の式からそのまま簡単に求められます。(ただし、べき展開がそもそも Lie 代数の一次の項と括弧積で表わされているはずであることは必要なので、Eichler の証明の様な物は必要。)
この導出法で、1/n の係数が出てくる意味とか、はじめて色々すっきりした気がします。
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BCH 証明は包絡代数に依っていますが、これは詳しくはホッホシルトのリー群の構造で1章かけて説明してくれています。が、わけわかめです。
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