fortran66のブログ

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【メモ帳】古代原子論と量子力学の接近

エピクロス派のズレ (swerve) 論

以前にも、エピクロス派の原子論の中に、自由意思を説明するために、原子が運動中にランダムにずれ動く (swerve) という運動論を導入したことと、それが現代の量子論にアイデア的に近いことを記しました。
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ニュートン力学的な決定論に基づけば、ラプラスの魔にあるように、我々の行動や決定も運動の初期値によって定められているのだから、自由意思は存在しないことになります。バートランド・ラッセルも若い頃にこれで思い悩んだそうですw

問 力学の法則が、自由意思というようなものはないということを立証する点について、あなたのおっしゃっていることが分かりませんが。

ラッセル その点はですね、青年のころ考えたことだったということをおことわりしなくてはなりません。当時わたくしは、力学の法則によって、物質のすべての運動は、原子星雲このかたずっと全く明確に限定されたものであり、この点はどういうことを口にするのにも伴うものと考えたのです。従って、Aさんがあらゆる与えられた場合に言おうとすることも、きちんと、原子星雲の当時に、力学の法則によって動かしがたいものになっていると考えたのです。ですから、Aさんは、自分の言おうとするものについて何の自由意思も持つものではないと考えたわけです。

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ラッセルは語る (1964年) (みすず叢書)

ラッセルは語る (1964年) (みすず叢書)

最近、ギリシア語の Fortran 資料をみたおりに、アマゾン検索によって A.A.Long がヘレニズム哲学の資料集も出していることを知ったので、図書館に寄ったついでに覘いてきました。

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The Hellenistic Philosophers, Volume 1

The Hellenistic Philosophers, Volume 1

The Hellenistic Philosophers: Volume 2, Greek and Latin Texts with Notes and Bibliography

The Hellenistic Philosophers: Volume 2, Greek and Latin Texts with Notes and Bibliography

(巻1は英訳と注疏、巻2はギリシアラテン語原文と注の模様)
 
A.A.Long の『ヘレニズム哲学』では、エピクロスの原子運動論と自由意思の関係についてザッとしか書いておりませんでしたが、The Hellenistic Philosophers, Volume 1 の注釈をみると、はっきりと quantum physics との絡みで、実は本当だったと注目を集めていると書いてありました。
Hellenistic Philosophy: Stoics, Epicureans, Sceptics

Hellenistic Philosophy: Stoics, Epicureans, Sceptics

swerve についてもより詳しく書いてあり、有限微小量の最小単位だけ軌道が平行にずれるという主張だったようです。これにより決定論を避けつつも、巨視的には原子の永久的な慣性運動からの違いが分からないとしていたようです。

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A.A.Long & D.N.Sedley, The Hellenistic Philosophers, Volume 1, p.52

当時は原子論的決定論から自由意思を救い出すための苦し紛れの珍説と物笑いの種となったとはいえ、西洋世界は斯様なアイデア溜まりを持っている一方、我が国が伝統的に参照してきた支那思想を見るにつけ、先秦六国の頃を除けば、自然哲学・論理学的な客観性への関心を一切失っており、政治・倫理的人間関係一辺倒となりアイデアの貧困と道徳的退廃をもたらしている点に鑑みて、亜細亜の悪友とは早く手を切るべきと信じるものであります。