学士会会報 No.975 2025-VI
去年の秋ごろに送られてきた学士会会報に、鴆毒(ちんどく)についての話を含む記事「毒の科学と歴史の魔力と魅力(著:舩山信次)」があって、面白かったのでメモっておきます。
鴆毒は漢文の本にたまに出てくるもので、脚注などには、毒を持つ鴆という鳥があって、その羽を酒につけると毒が溶け出て、その酒を飲むと死ぬ、といったことが書いてあります。どうせ支那人の法螺話だろうとは思いつつ、史記に出てきた「兕(じ)に匪(あら)ず虎に匪ず、彼(か)の曠野(こうや)を率(したが)ふ」の「兕」が、従来の注釈では一角の毛長の野牛だとかされつつ、甲骨文字にも出てきて、記述からして早くに絶滅したものの犀のことだろうと見なされるようになったように、鴆にも何か根拠があるものかしらんとも思っておりました。
この記事では、鴆毒の正体は、正倉院御物にある鶏の卵の形と大きさをした「雄黄(おおう)」という As4S4 というヒ素の化合物の石ではないかと推測しています。これは燃やすと猛毒の亜ヒ酸(As2O3)を生じるそうで、「周礼」の中にこれを筒の中で燃やして昇華したものを鳥の羽で回収するというような下りがあるようです。
学士会会報も文系の記事は左翼狂人の寝言みたいなのが多いですが、理系の記事には面白いものがちらほらあります。



