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【寝言】ガリレオ「星界の報告」

オランダの覗きメガネ、ガリレオの望遠鏡

文化の日らしく、ガリレオ・ガリレイの「星界の報告」をながめることしばし。

ガリレオは、本邦で言えば戦国から徳川幕府初期にあたる人。

ガリレオによると、オランダで発明された望遠鏡の噂が広まった時、信じる者も信じない者もいたそうだが、ガリレオは複数ルートから話を聞いて本当であろうと思い、原理を考察してすぐに独自にガリレオ式の望遠鏡を作ったようである。

そもそもガリレオのいたイタリアには優れたガラス工房があって、オランダに先行すること数百年前からメガネレンズを作っていたにも関わらず、望遠鏡を発明することはできなかった。しかしガリレオが噂を聞いてからすぐに望遠鏡を作れたように、要素技術としてのレンズ制作の能力は十分あったと推測できる。

望遠鏡発明の経緯は、おもしろおかしい真偽の定かではない逸話によると、オランダのレンズ工房で遊んでいた子供がレンズ二枚を組み合わせると遠くが近くに見えるという事を偶然見い出し、親父がそれを望遠鏡として売り出して特許申請したことになっている。この点において、士農工商でいうところの工商的で、金勘定に熱心で、実用主義的で、見えるものをそのままに認識する、俗っぽい往時オランダの性質が幸いしたように思える。

さて当時のオランダ人も望遠鏡で月や星を見たであろうことは間違い無いだろうが、望遠鏡をもっぱら軍事・航海など実用に供したと言われている。あるいは天井の穴から痴情のものを覗いたのではなかろうかと邪推する。

その一方で、ガリレオは望遠鏡を手にすると「地上のものを離れ、天上のものを見ることに専念した。」、そうして観測した事物を「星界の報告」としてまとめて出版し、地動説を補強する方向に向かっている。

これらの事実は、二重に興味深いように思われる。

第一に、イタリアは要素技術としてのレンズを数百年間先行して持ちながら、実用・応用先として望遠鏡を発明できなかったこと。

第二に、オランダは望遠鏡を発明しながら、応用として天体観測の方には向かわなかったこと。結果的に望遠鏡を観測・測定装置としたガリレオ天文学で先行されたこと。

である。

一方は、子供遊びのような偶然をあるがままに実用物に仕立てた俗人国家オランダらしさ、他方は、新発明をすかさず天動説・地動説論争や天体論に適用する問題意識を持っていた西洋学問最先端のイタリアらしさとも言えるが、それぞれの強みがまた同時に弱みにもなっているようにも感じられる。

つらつら思うに、何事も極端な原理主義に走らず、相補性を残しておく必要があるように思われる。

すなわち、スウェデンボルグの星界の報告を出すたま出版も、必要であろうという結論に到達する。