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【寝言】ハドソン研究所創始者ハーマン・カーンと電子計算機

Herman Kahn

昨年のマイク・ペンス米副大統領の反中宣言会場に選ばれ、日高義樹でおなじみの米ワシントンのハドソン研究所ですが、最近ではトランプ大統領と不仲で辞職したマクマスター補佐官が、なぜか新設の日本部長になったとニュースに出ていました。また安倍首相が 2013 年に 外国人として初めて創始者の名を採ったハーマン・カーン賞を受賞していたようです。

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【ハドソン研究所とは?】  ハドソン研究所は、米国ワシントンにある保守派のシンクタンクであり、1961年にハーマン・カーン氏によって設立された。  カーン氏はもともと、大学で物理学を専攻し、卒業後ランド・コーポレーションで物理学者として道を歩んだ後、核戦略について執筆。その後、日本を含めた地政学を研究するようになった。  独立した翌年には、「日本は経済超大国になる」と予測している。1970年には『超大国日本の挑戦』を執筆し、「日本は、技術力と金融力をもった経済大国になることに疑う余地はなく、世界的軍事力と政治的影響力を勝ち取る可能性が高い」と述べている。  他方、カーン氏は日本の良き旧友でもあったと海外紙は報じている。死去する1983年まで池田元首相ら歴代首相と付き合いがあったようだ。同研究所は今も日本と同様の交流を続けている。

そんなハドソン研究所ですが、元々物理学者だったハーマン・カーンランド研究所にいた時に、フォン・ノイマン核兵器による相互確証破壊(Mutual Assured Destruction, MAD)を実現するものとしての『多数の水素爆弾をコンピューターで管理し、いざという時にすべてを起爆して地球上を放射性降下物で覆う』終末兵器を発案して物議をかもしたようです。この終末兵器は、キューブリックの映画『博士の異常な愛情』にも出てきます。

ここまでがまくら

ランド研究所時代のハーマン・カーンの書いたモンテカルロ法による多重積分の記事が、アンソニー・ラルストン、ハーバード・S・ウィルフ共編「電子計算機のための数学的方法I」に出ています。この本の原著は 1960 年出版で 、1950 年代に急速に進んだ digital computer (計数型計算機)での数値計算についてまとめた本です。訳書のあとがきによると IBM の Scientific Subroutine Package (SSP) の理論的背景をまとめたもので、日本のコンピュータ演算ルーチンの種本だそうです。

カーンの記事では、ランド研究所発行の乱数表の話の後、乱数発生装置を使わずとも計算機では決定論的数列で生成される疑似乱数で十分だとして、二進法コンピュータ用の疑似乱数の生成法として線形合同法の Rn+1=K Rn mod 2n が与えられていて、係数 K は5の奇数べきがいいと言っています。

[追記R3.2.6] ランド研究所発行の乱数は熱雑音の電流によるようです。 fortran66.hatenablog.com

カーンは元々中性子が専門のようですが、そういえば私も昔 FORTRAN入門の演習で原子炉壁で散乱される中性子を乱数で計算して吸収係数だか平均自由行程だかを求めさせられたような気がしますw 疑似乱数の式の mod 2n がどっから湧いてきたものかと不思議に思いましたが、よくよく考えれば本来は単に符号なし整数で桁あふれを無視するというだけですね。  

Mathematical Methods for Digital Computers: v. 1

Mathematical Methods for Digital Computers: v. 1

  • 作者:RALSTON MATHEMA
  • 発売日: 1960/12/01
  • メディア: ハードカバー

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アメリカ陸軍始まって以来のIQの高さを持っているというのは有名だが、実際はあらゆるIQテストの傾向を分析して対策を練った上でIQテストに臨んだことで好成績を残したというものだった。ちなみにカーンは30分で全問解答して一旦会場から退出したものの、後になって1問ミスに気付いて会場に戻った。

『熱核戦争論』での過激な主張もさることながら、演説好きで肥満体という一種独特なキャラクターのインパクトは強烈であったためか、さまざまなフィクション作品でモデルになっている。

映画『博士の異常な愛情』 主人公のドクター・ストレンジラブのモデルとなり、カーンが自ら同作品を監督したスタンリー・キューブリック著作権料を要求したというオマケまでついた。

アニメ「ガンダムシリーズ」 登場人物のハマーン・カーン(女性)は、カーンのアナグラムに由来している。

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その他

ソースを失念しましたが、たしか IBM の科学サブルーチンライブラリ SSP は出来が良くなくて、そのせいでサード・パーティー数値計算ライブラリ開発を促し、IMSL ライブラリなどが成立したと読んだ記憶があります。真偽不明ですが。